写真 路線パスは時代と共に変わるもの新時代の大変化を読んだ老舗の決断古都金沢に吹く新しい風
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ドライバーの聖川一成さん(左)とガイドの稲手理子さん。
北陸鉄道の定期観光バス・エアロキング(写真上)。観光客の評判もいい。

四季折々の美しさと、絢爛たる加賀百万石の歴史をいまも残す古都金沢は、いつ、何度きても飽くことのない魅力にあふれている。その城下町を中心に、能登地区、加賀地区までバス路線を網羅する北陸鉄道株式会社(本社・石川県金沢市割出町)は、石川県下で最大の規模と歴史を誇る。歴史と伝統は、しばしば疲弊と甘えの構造を生み出すのであるが、北陸鉄道はまるで違う。新時代の大変化を読んで、次々と新しい路線を打ち出している。その着眼点と発想はどのようにして生まれてきたのか。
AERO ROAD

金沢の旅スタイルを変えた乗り降り自由のレトロバス
 「金沢市内は狭い道が多く開発が遅れた。そのおかげで、いまも保存すべき歴史的遺産が市内各地に点在しています。しかも狭い範囲に集中していますから、本来は“見て歩きコース”なんですね。だからといって歩きだけでは、やはり時間がかかる。かといって定期観光バスのように大型バスでは、狭い道は限界がある。それで従来、点であった見どころを線で結ぶ小型バスを走らせることにしたのです」
 と水野社長の話す小型バスは、今年7月下旬から運行を開始したばかり。3台の小型バス・ローザを、古都金沢のまちにふさわしくレトロ調のボンネットバスに改造。さらに、後部から車いすで乗れるようにした。愛称は金沢出身の文豪、泉鏡花、徳田秋声、室生犀星からとって、それぞれ命名された。
 JR金沢駅東口を起点に、18の停留所を巡回する「城下まち金沢周遊」レトロバスは、始発8時30分、終発18時、1周38分、15分間隔で運行する。料金は200円(子供は半額)だが、8枚綴り専用回数券を買えば1000円で、1回あたり125円になる。さらに500円の1日フリー乗車券を買えば、乗り降り自由で何回でも利用できるというから、便利でしかも割安になる。
 運行開始は「金沢まち博」に合わせ7月29日から。夏休みも重なったため、利用客が多く、しかも大好評だったという。「金沢まち博」は、市内に点在する歴史遺産をパビリオンに見立てた市主催のイベントだった。
 金沢市は、北陸3県の中枢都市である。支店や営業所が多く、平日はビジネスマンが地方から集まるし、週末は観光客が増える。来年は「金沢緑化フェア」をひかえ、2年後はNHKの大河ドラマ「前田利家」が始まり、いま大開発している金沢駅周辺の工事が完了すると、さらに観光客の増加が見込まれる。
 同時に北陸鉄道の駅舎も新しく生まれ変わり、バスターミナルも交通網もさらに充実する。まさに保存と開発を使い分けて、金沢市の新世紀が始まるのだ。北陸鉄道には、いま絶好の追い風が吹いている。



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大河は一滴の雨から始まるバス路線も同じ発想だ
 金沢市を中心とした北陸鉄道の鉄道・浅野川線と石川線の営業開始は、大正時代までさかのぼる。バスの営業開始は昭和18年という大老舗。しかし企業コンセプトと、それにともなう戦略は斬新だ。新時代の変革とニーズを読み、つねに先手を打ってきた。
 過疎化する地域の路線バスはいち早く分社化し、地元住民の雇用も含めて「おらが町のバス会社」のコミニティバスとして再生させた。これは、少ない乗客でも維持できる路線バスとしての役割ばかりか、町村の過疎化の歯止めにも寄与した。そういう意味では、石川県の過疎地域はバス路線が充実しているという。
 「いま郊外にはどんどん大型店舗ができています。公共施設もできる。学校も病院もでき、都市の空洞化がいわれています。これは全国共通で、金沢地区も例外ではありません。従来の都心を終点としたバスのネットワーク路線が崩れてきている。つまり生活形態が完全に変わっているのです。
 ですから、2つの路線をドッキングさせて、都心を通過地とした路線が日常的になっています。たとえば学校群が郊外にあれば、朝だけ都心を経由せず、ダイレクトに目的地に直行便を走らせる。これで時間も料金も節約できます。うちでは、モーニングダイレクト便といっていますが評判がいいですよ」
 定期券も学生の学期に合わせたターム(学期)定期を10年も前から採用している。すべてが、乗客のニーズに合わせた企画なのだ。
 だから路線バスは、従来のように幹線だけを走らせて乗客を乗せていればいい時代は終わったのだという。道が狭かったり、利用者が少なければ支線に小型バスを走らせ、一人でも二人でも乗せて小さな塊をつくり、大きな塊にすればいいという。大河も雨の一滴から始まるという発想なのだ。
 まずバス路線を残す。その上でどう発展させるか。「そこからが勝負」だと水野社長はいう。従来の路線にこだわらず、時代のニーズに合わせて脱皮する対応ができれば、おのずと展望は開けていくにちがいない。



北陸鉄道株式会社
●本社/石川県金沢市割出町
●取締役社長/水野卓哉
●設立/昭和18年
●従業員/953名 ●保有車両/458台
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水野卓哉社長



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