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懸念材料は残っているが 幸いにも世界経済は、かなり明るさを増してきました。OECDの経済見通しでは、各国の成長率はいずれも半年前の予測値を上方修正しています。ただし、先進国のなかで日本だけが際立って低い成長率であることは、気になるところです。 米国の実物経済は引き続き好調です。米国はこの二、三カ月の間にインフレ警戒型の金利政策に切り換え、その効果が徐々に出始めています。当分、安定成長を持続する可能性が高いでしょう。 確かに米国経済にも懸念材料はあります。仮に中南米に金融経済不安が起きれば、米国が受ける打撃は相当なものになります。また、米国の株価水準は理論値よりもかなり高く、近い将来、株が暴落すると見る向きもあります。しかし、この十年間、インフレなき完全雇用のなかで安定成長を続ける米国の実物経済は順調そのもので、株価が大幅に下落する公算は極めて小さい。多少の調整局面はあるにしても、世界経済の足を引っ張るような事態が起きることは、現状では考えにくいと見ています。
欧州経済も明るさを増し、今年は平均で三・五%程度の成長が期待できそうです。しかし、失業率は依然高く、ユーロはドルに対してかなり格差をつけられています。欧州はまだ構造的な問題から抜け出せず、景気は改善していますが、米国のようなダイナミックな成長の姿にはなっていません。 アジアは急速に景気が回復してきました。アジアの国々は貯蓄率が非常に高く、労働者の教育水準も相対的に高い。このように、成長するための基本条件を維持しているので、再び世界の成長センターになる可能性は極めて高いと思います。 特に中国は、ここにきてだいぶ明るさが出てきました。人民元が切り下げられたりすると、世界経済に与える影響は小さくありませんが、現在は大幅な切り下げを行なう可能性はほとんどなくなったと見ています。 経済対策の効果が現われて
私は、これからの日本の景気展望として、三つのシナリオを想定しています。
産業革命に等しい激変期 日本再生は、極論すれば、IT革命を本格的に軌道に乗せることができるかどうかにかかっています。IT革命は、設備投資の増大、生産性の向上、技術進歩による成長の下支え、などの効果が期待できます。米国がそうでした。一九九二年に情報スーパーハイウェイ構想が打ち出され、これに共感した企業がIT革命を積極的に推進したことを契機に、米国の設備投資は今日まで毎年平均一〇%も伸び続けています。 今後の経営環境は、二百年前の産業革命に匹敵するような激変期を迎えます。 たとえば、金融ビッグバンが進展することで、企業と金融機関の関係はどうなるのか。従来の系列がかなり崩れてきているなかで、おそらく、信頼関係に基づきながらも緊張関係を持った形に変わると思います。 また、国際会計基準の受け入れが来年四月から本格化するようになると、海外からの投資が活発になり、日本の企業に対する敵対的な買収が頻繁に起きます。これを防ぐためには、収益率を上げて常に株価に反映させるような経営をするしかありません。それだけ経営者の責任が重くなります。 そして、IT革命がミクロの面でどういう変化をもたらすかが重要なポイントです。これには三つの側面があります。 一つは、企業自体がIT化を進めることで生産性を飛躍的に向上させ、ライバル企業に対して優位に立つことです。 二つめは、携帯電話(iモード)が象徴するように、IT革命は爆発的に新しい商品を登場させます。こうした商品開発への取り組みも情報化対応の一つです。自動車もますます電子化、IT武装が推進されるでしょう。 そして、三つめは情報コストの劇的な低下によって、ビジネスのやり方が大きく変わることです。情報コストが安くなったために、インターネットを自由に使うことができます。米国は限りなく情報コストをゼロに近づけ、新しい動きを生みだしました。パソコンなどネット販売による中抜きの直販体制がそうです。そこには既製品と注文品の格差がなく、自分のニーズにあったものを安価でしかも迅速に手に入れるシステムが確立されています。 IT革命が企業にもたらす影響はものすごいものがあります。それは必ずしもプラスの面とは限りません。情報化に乗り遅れるようなことがあると、ライバル企業に差をつけられ、マイナス面も大きいのです。みなさまの企業が適切に対応して、二十一世紀に洋々たる発展をとげ、勝ち組になることを大いに期待しています。 |
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ここに掲載したものは、平成十二年六月二十一日京都で行なわれた 「三菱ふそうセミナー」を抜粋したものです。 |