写真 日通総合研究所 常務取締役 湯浅 和夫
●プロフィール
昭和21年生。早稲田大学第一商学部卒業。同大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和46年日通総合研究所入社。日本物流学会理事。(社)日本ロジスティクスシステム協会調査・情報委員会委員をはじめ各種の公的活動に従事。「物流管理入門」「これからの物流がわかる本」をはじめ著書多数。


情報制約から情報共有へ
荷主の物流は大きく変わる
 ITと物流についてお話します。ITはあくまで手段です。何かをするためにITを使う。これに対して物流はリアルな活動です。いくらITが進歩しても物流はなくなりません。しかし、ITは物流を大きく変化させる可能性があります。
 IT時代を決定づけるのはインターネットです。従来、ある意志決定の段階において、必要な情報を簡単に入手することはできませんでした。ところが、インターネットによって情報が簡単に入手できるようになると、こうした情報制約がなくなり、物流も輸送も大きく変化します。インターネットは、「情報共有」という言葉に置き換えられます。荷主と物流会社の間で情報を共有する。あるいは、社内で必要な情報が共有できる。これはすごいことです。
写真  パソコンがいくら高性能になっても、できることは業務の効率化までです。しかし、パソコン同士がインターネットで結ばれると、従来の業務そのものがいらなくなります。あるいは、まったく新しい業務が生まれる可能性があります。
 今までは、情報制約を前提にして組織をつくり、取引関係を築き、業務を行ってきました。特に物流は、情報制約のなかで非常にむだな動きをしてきました。荷主企業の物流はその最たるものです。
 ITによって荷主企業の物流は大きく変わります。荷主企業が物流管理を行う場合、その基本原則は、できるだけ物流を減らすことです。今までは情報がなかったので、物流の減量化が思うようにできませんでした。しかし、情報が手に入るようになると、一気に減量化が進みます。このことは、物流会社にとっては好ましい事態ではありません。輸送や保管が減るからです。
 物流の最適化には、どこで何がいくつ売れているかという情報が不可欠です。それがないと見込みでやるしかありません。見込みの物流では、活動の効率化に重点が置かれます。全国に散在する倉庫を物流センターに集約するとか、輸送効率を上げて帰り荷を取るとか、行き着く先は輸送単価の切り下げです。こうした後処理型の物流は非常に遅れた物流といえるでしょう。
 残念ながら、日本の荷主企業の9割以上が、まだこの段階にとどまっています。情報不在の見込みの物流のデメリットは、結局、売れないものを運ぶ、売れないものを保管する、売れないものをつくる、という三つの大きなむだに集約できます。これをなくすためには、見込みの段階から情報にもとづいた物流システムやロジスティクスへと、物流を発展させる必要があります。
 物流システムとは、企業の物流施設間を情報によってうまく動かす仕組みのことです。これに対してロジスティクスは、生産、物流、仕入れを一体化した供給システムです。これによって、物流部門は配送センターに必要なものを送り込むとともに、生産部門に情報を提供し、生産も市場の動きに合わせてできるようになります。
 これから皆さんが荷主から在庫を預かる場合、欠かすことができないサービスがあります。それは、荷主から預かっている在庫情報をリアルタイムで荷主企業に提供するサービスです。
 たとえば、全国にある倉庫の入出庫の状況を入力して、そのデータを本社の基幹システムに送り、荷主別に在庫データベースとして蓄積します。これをインターネットにつなげると、荷主企業の生産、物流、営業部門のどなたでも、パスワードとIDでログインすれば、知りたい在庫を見ることができます。さらに、データを自分のパソコンに取り込んで活用することも可能になります。なぜこんなサービスができたかといえば、荷主企業の物流が、情報制約によって行き止まりになっているからです。
 以上のように、情報をベースにして物流、生産、仕入れを連係して行うのが、ロジスティクスです。必要なものしか配送や保管をしないから、物流コストを削減できます。欠品がなくなるから、売り上げ増につながります。さらに、売れないものをつくるむだを削減できます。だから、物流会社が提供するロジスティクスの支援サービスは、もっと高い料金を取ってもいいのではないか、ほんとうにそう思います。


注文という行為がなくなる
ようやく動き始めたSMC
 物流の世界には、実際の需要が川上に行くにつれて増大するという現象があります。たとえば、実際に売れた商品は3個なのに、小売店は次は5個売れるだろうという見込みで問屋に発注する。問屋は、さらに上積みしてメーカーの販売部門に7個注文する。これを受けてメーカーの生産部門は、欠品させないためにも15個つくろうということになる。実際は3個の需要なのに生産は15個。このように、実需と生産計画の大きなギャップが現実に起きています。
IT時代の物流の行方  このギャップは、情報共有によって解消できます。販売店は消費者の購買データをメーカーへ公表すれば、メーカーは実需にもとづいて生産できるようになります。
 情報の共有化が進展すると、発注という行為がなくなります。小売が卸に、卸がメーカーに注文を出すというのは、川下の需要動向を川上に伝える行為です。これが情報共有によって川下でいくつ売れたかがわかるようになると、需要を川上に伝える行為はもう必要ではありません。
 そうなると物流は大きく変わります。従来は、お客さんから注文を受けて、その通りに届けてきました。これからは供給側が情報にもとづいて、この商品はこれだけ持っていれば大丈夫といった必要量を、お客さんに送り込むようになります。注文も物流サービスもありません。納期、受注締切時間、受注単位など、従来当たり前にやってきた物流はすべてなくなります。そういう動きが実際に起きつつあります。
 メーカー、問屋、小売の3者が情報を共有すると、ビジネスプロセスを簡素化できます。具体的には重複業務の排除です。受発注の繰り返しをやめる。末端の需要動向がわかれば受発注は不要です。また、小売、問屋、メーカーの各段階にある在庫もやめる。在庫はメーカーだけが持てばいいわけです。このように供給連鎖のなかで、重複した業務を排除する。これがSMC(サプライチェーン・マネジメント)です。
 情報共有によって、注文を受けてから届けるという物流はなくなる方向にあります。これは、お客さんにとっても望ましいことです。毎日毎日発注するというのは、大変な作業です。どうしてもいい加減になり、欠品や不良在庫を発生させることになります。その作業を供給側が代行できるなら、それはまかせて販売に専念すべきです。これからは、物流のアウトソーシングが進むといわれています。物流機能、物流システムを一括して外注化するやり方です。荷主のなかには、物流を自社でやる必要はないと考える企業がたくさんいます。うまく代行してくれる業者がいたら、まかせようというニーズが根強くあります。
 IT武装が遅れている会社には、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)の活用をおすすめします。これは、配車管理システムや運賃計算システムを、使いたいときだけ、インターネットから取り出して使用できる仕組みです。高額なコストをかけずに、レンタカーを借りるように使った分の料金を支払う。まだ使い勝手に問題はありますが、とにかく変動費で対応できるのが大きなメリットです。
 21世紀の物流は、間違いなく最適化が進展します。荷主企業の物流は大きく変わり、アウトソーシングのように物流のプロに仕事が移行します。重要なのは、ITをベースに荷主企業に対してサービスを提供し、あるいは自社の業務の効率化を進めていくことです。インターネットをいかに使うか、それが飛躍するためのカギになります。

ここに掲載したものは、平成13年7月27日仙台で行われた【三菱ふそうセミナー】第I部を抜粋したものです。


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