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いま、なぜM&Aが注目されているのですか?
ライブドアとフジテレビによるニッポン放送の争奪戦が、連日マスコミをにぎわせていました。この大騒動のなかで、 俄然注目を浴びるようになったのがM&Aです。また、これまで聞いたことのない「ポイズン・ピル」や「ホワイト・ナイト」などという ことばも飛び交っています。じつはM&Aは、企業の成長にとって欠かせない手段ともいわれているのですが、 本当なのでしょうか? また、この手段は、やっぱり邪道なのでしょうか?



「会社乗っ取り」のイメージが強いのですが、M&Aはアメリカ経済を発展させた原動力
 M&Aは、英語のMerger(合併)とAcquisition(買収)の頭文字をとったものです。日本では「企業の合併・買収」と訳されています。ビジネスの本場アメリカの企業は、100年以上も前から頻繁にM&Aをくり返してきました。
 アメリカでのM&Aには、何回かのブームがありました。1920年代には自動車のゼネラル・モーターズなど、巨大企業が誕生するきっかけになりました。
 アメリカ経済の「黄金の60年代」も、M&Aが活発でした。2万数千社がM&Aされ、しかも異業種によるM&Aが多かったこともあり、コングロマリットという言葉が盛んに使われました。
 1980年代のブームでは、経済のグローバル化に備えたM&Aと同時に、ライブドアによるニッポン放送買収のような敵対的M&Aが流行りました。しかし、敵対的M&Aの多くは失敗に終わったようです。
 ひと言でM&Aといっても、合併と買収は別のものです。合併というのは、三菱銀行と東京銀行が一つになり東京三菱銀行になったのが好例です。専門的には、新設合併といいます。このほか、吸収合併というのもあります。
 一方、買収というのは、プロ野球のダイエーホークスがソフトバンクホークスになったのが好例です。別の会社に経営上の全部、あるいは一部の支配権が譲渡されて移ることです。ソフトバンクの球団獲得に際しては双方の了解があったことから、友好的なM&Aといえます。



TOBよりもっと怖いのがLBOです会社をM&Aする手段はいろいろある
 M&Aに、よく登場するのが株です。ニッポン放送の争奪戦で、フジテレビはTOBという方法をとりました。TOBは「公開買い付け」とよばれています。企業を買収する目的や買い付ける株式数、1株の値段、応募期間などを公表し、市場外で多くの株主から株を買い取る方法です。
 買い取る株の値段は、市場価格より高めに設定されます。高めにすることによって、短期間に多くの株が集められるからです。株式市場で大量の株を買い集めようとすると、時間がかかり、しかも株価が値上がりしてしまうデメリットがあるからです。 
 LBOという方法による買収があります。このLBOによるM&Aでは、自己資金がほとんどいりません。今回の買収劇を例にとると、買収する側がニッポン放送の将来稼ぐ利益や、手持ちの預金や資産を担保に、金融機関や投資会社から巨額の買収資金を調達します。その利益や資産を担保に、買収する側が発行する債権を、ジャンク・ボンドなどとよんでいます。
 1980年代のアメリカでは、このLBOによる敵対的M&Aが横行し、その結果、買収資金を融資した金融機関の倒産が相次ぎました。敵対的に買収した企業の業績が悪化して融資資金が戻らなかったからです。
 敵対的M&Aを仕掛けられやすいのは、1含み益に比べて株価が安い、2不動株比率が高い、3内紛がある、会社などです。また、敵対的M&Aをおどしに使って、買い集めた株を高い値段で引き取らせるのがグリーン・メールです。



敵対的M&Aから会社を守る方法と、M&Aを活用して企業を大きくする方法
 敵対的M&Aに、無抵抗な経営陣はいません。そこで、いろいろな反撃手段が考えられてきました。
 まず、ポイズン・ピル(劇薬)です。たとえば敵対的M&Aのターゲットにされたときは、株主に時価の半額で新株を引き受ける権利を与えるといった方法です。そのほか、ゴールデン・パラシュートティン・パラシュートなどもあります。
 こういったポイズン・ピルを定款に定めておくには、経営陣が株主や社員の支持を得ておかなければなりません。
 そのためには、つねに企業価値を高め、株式配当や社員の待遇に気を配ることが必要になります。
 敵対的M&Aに対抗できなくなった場合は、別の企業に買収を頼む方法もあります。その別の企業を、ホワイト・ナイト(白馬の騎士)といいます。正義の味方になぞらえたいい方です。仕掛けた企業を逆買収するのがパックマン・ディフェンスです。
 買収者がほしがる事業や資産、人材などが、クラウン・ジュエルです。このクラウン・ジュエルを切り離してしまう方法があります。これがスコーチド・アース・ディフェンス(焦土作戦)とよばれるものです。
 敵対的M&Aは別にして、一般的なM&Aには大きなメリットがあります。その第一が、「時間を買える」ことです。
 たとえば、特殊な技術を自社で開発するには、人材を確保し設備を整えなければならないといった、ゼロからのスタートになります。しかも成功するかどうか不明です。
 それならば、特殊技術も人材も設備もワンセットでそろっている企業をM&Aで買ってしまったほうが、確実で早いことになります。これがM&Aのメリットです。
 また、業種にもよりますが、市場のシェアが3位以下の企業の場合、M&Aを活用してトップに並ぶことで、生き残りをかける企業もあります。
 儲からない子会社や事業部門をかかえている企業にとっても、M&Aは重要です。M&Aで手にした資金を、成長性の高いほかの分野に投資できるからです。
 日本国内では、去年のM&Aの件数が史上最多の2000件超になったのも、生き残りを賭けた厳しい企業環境のためなのです。



イラスト

  illustration:唐仁原 教久  



ニュースなことば●M&A関連用語
【コングロマリット】業種の異なる企業をM&Aして巨大になった多角経営企業。複合企業ともいう。
【TOB】Take Over Bidの略。
【LBO】Leveraged Buy Out(レバレッジド・バイ・アウト)の略。レバレッジはテコの力の意味。
【ジャンク・ボンド】格付けが低く、リスクが高いことから、屑(くず)債権ともいう。
【グリーン・メール】ブラック・メール(脅迫)と、グリーン・パック(ドル紙幣の裏の緑色)による造語。
【ゴールデン・パラシュート】TOB防止のため、解任が予想される経営陣に多額の退職金を支払うなどの規定。
【ティン・パラシュート】ブリキのパラシュート。予想される社員のリストラに、高額の退職金やストック・オプションを約束するTOB防止策。
【クラウン・ジュエル】王冠の宝石の意味で、高度な技術や強固な販売網、ブランド力、得がたい営業免許なども。


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