IOS塾 最高の品質を市場に提供し続けることが企業の使命であり社会的責任である
集中連載8目黒直之



ISOが目指す経営資源とは
人材教育と設備、
そして作業環境の充実である
 このシリーズで、ずっとお話している「最高の品質(製品・サービスの)を、つねに市場に提供し続けること」、という企業の使命(ミッション)と社会的責任CSR (Corporate Social Responsibility)を果たすためには、資源が必要となります。
 ISOでは、
(a) 自社の品質マネジメントシステムを実施し、維持するため、また、有効性を改善するため、
(b) お客様の満足度向上のために、必要な経営資源を明確にして提供しろ、と要求しています。
 ISOがいう経営資源は、「人材、設備(施設)と作業環境」の3点に絞っています。
 まず人材です。
 ISOの要求事項は、下記の通りです。
6・2・2 力量、認識(awareness)、および教育・訓練
 組織は、次の事項を実施すること。
(a) 製品の品質に影響がある仕事に従事する要員に、必要な力量を明確にする、
(b) これらのニーズを満足するように教育・訓練し、または、他の処置を講ずる。
(c) 講じられた処置の有効性を評価する、
(d) 要員が、自らの活動の関連性と重要性を認識し、品質目標の達成に向けて、自ら、どのように貢献できるかを認識することを確実にする、
(e) 教育、訓練、および技能、経験についての記録を維持する。
 たとえば(a)の、「必要な力量」を明確にするとは、どういうことか? 輸送プロセスを担当する社内スタッフを考えてみましょう。
 輸送プロセスを担当するには、どのような力量が必要でしょうか? まず、大型免許が必要です。これは資格ということになります。資格には、公的な資格、つまり、法律で要求されている資格と社内独自資格があると考えてください。
 輸送プロセスには、公的資格が必要です。その他には、どのような力量が必要となるでしょうか? 最近の宅配便のドライバーを考えると、より明確になります。
 営業ドライバーの存在です。彼らには、「適切な接客」という力量が求められます。
 また、集荷にともない、末端(コンピュータ)を使用できる力量も必要とされています。ある地区では、たとえば、外国人が多い地域では、ある程度の英会話力が求められる場合もあるでしょう。
 このように、一つの業務を完全に行なうためには、必要な力量というものを明確にする必要があります。この力量も時代と共に、つまり、顧客ニーズの変化に伴い、要求される力量も変化するのです。
 10年前のドライバーには、「適切な接客」能力は要求されていない場合が多かったでしょう。また、端末機器のようなコンピュータを動かす力量も、要求されていませんでした。




人材は「人財」でもある。
顧客(市場)ニーズにより多様化し
高度化した人材を育成しているか
 「最高の品質(製品・サービスの)を、つねに市場に提供し続ける」には、つねに変化する顧客ニーズ(市場ニーズ)を把握する必要があり、そして、それに伴い、各スタッフに要求される力量も変化するのです。
 時代とともに変化する顧客(市場)ニーズ、時代とともに多様化する顧客(市場)ニーズ、時代とともに高度化する顧客(市場)ニーズ、時代とともに見えなくなる顧客(市場)ニーズ。
 これは、即ち、
 時代とともに変化する力量、
 時代とともに多様化する力量、
 時代とともに高度化する力量です。
 よく、「人材」ではなく「人財」という言葉を目にしますが、まさに、その通りではないでしょうか? 人財は、組織が育成しなければなりません。つねに変化する「要求力量」を明確にして、教育、トレーニングなどを実施していなければなりません。
 このことができなければ、「顧客満足度の向上」は遠い夢です。顧客満足度を向上させることができなければ、組織は破綻します。これが要求事項の(b)です。
 「教育・トレーニングを実施した」という事実と、「力量を身につけてくれた」、「力量がアップした」とは別の話です。教育・トレーニングは、時間とコストがかかります。当然のことながら、効果確認をする必要があるでしょう。組織の破綻から身を守るためにも、非常に重要なことです。
 それでは、どのように実施した「教育・トレーニング」の有効性を評価するのか? ということが問題になります。評価方法がまずいと、有効性が、あやふやになります。たとえば、下記のような方法が考えられます。
【ステップ1】本人に報告書(受けた教育・トレーニングについて)を提出させ、上司が内容を確認する。
【ステップ2】テスト(ペーパーなど)を実施する
【ステップ3】上司が、その教育・トレーニングの効果を確認する。(実際の作業などで)できている・できていない、の判定をする。
【ステップ4】より正確に、より高度にできるようになっているかを、上司が実際に確認する。
 先にあげた営業ドライバーを例に考えてみましょう。新たに要求されている「接客」能力についてです。これは、外部の研修機関に、その教育・訓練を依頼する場合が多いでしょう。
 コストと時間をさいて実施したこの講習が、実際に、どのような効果があったのか、非常に重要な問題です。ステップ1では不十分です。また、ステップ2でも、効果的な確認方法とはいえず、ステップ3の方法をとるのが、ベストということになります。
 このような講習が毎年実施されれば、翌年には、ステップ4が必要となるでしょう。個人個人の力量は、このように確認することが重要です。




ISOが求める接客の力量とは
顧客満足のための
接客教育向上の明確な確認である
 それでは、組織全体として、営業ドライバー全員の「接客の力量」が向上しているのかが確認できているのか? となると、別問題です。
 これは、お客様の率直な意見に耳を傾ける必要があるでしょう。
 顧客満足度調査によって、接客の力量の向上を評価するという考え方です。また、接客に関するクレームを分析することで、力量の向上を確認できるでしょう。
 アメリカでは、ミステリーショッピングという手法があるそうです。まず、希望する組織が、自社の評価を、その会社に依頼します。依頼を受けた会社は、顧客に扮した調査員を派遣し、無理難題を吹っかけます。当然、このようなことは事前に知らされておらず、ターゲットとなった担当者が、どのような対応をしたのか、隠しカメラで録画し、経営者に報告するのです。
 極端な例ですが、このような画像を確認すれば、実施した教育・トレーニングの効果や、その人、組織の力量などが一目瞭然です。力量不足、経験不足で、日々お客様が去っている場合が多いのです。
 次に、設備(施設)と作業環境について考えます。
 インフラストラクチャー(設備や施設など)は、日々、変化する顧客(市場)ニーズに対するために、必要な設備や施設を決定し、提供する必要があります。
 環境にやさしい車両や、運行管理を効果的に行なうためのコンピュータやソフトウェア、端末機器や、仮眠施設なども該当します。必要性を検討し、提供し、維持管理しなければなりません。
 どのような規模の組織であっても、経営資源の確保は重要な問題です。そして、確保した経営資源は、維持管理されていなければなりません。顧客ニーズや市場ニーズの変化を正確に把握し、それらを吸収した経営資源のマネージメントが要求されているのです。



【めぐろ・なおゆき】 1958年生まれ。
ドイツ認証機関テュフ・ラインランド・ジャパン(株)ISO9001/ISO14001主任監査員。浜松、東京地域を中心に監査活動、コンサルティング活動およびISO9001/ISO14001内部監査員養成コースの講師を勤める。現在までに1300名以上の内部監査員を養成。事業所実績129社(2005年3月現在)。

イラスト

  illustration:クロイワ・カズ  


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