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食べるだけで元気になる食事学 - 森野眞由美

無病息災を願う七草粥の効能は栄養価が証明している

奈良時代から続いているお正月の縁起物は冬の栄養素たっぷり

 一年の無病息災を願って、1月7日の朝に「七草粥」を食べる風習は、いまだに消えてはいません。
 「七草セット」が、お店に並んでいるのをみるだけでも、新年の喜びを感じますね。若菜の七草を食べる中国の風習が日本に伝わり、奈良時代から始まったそうです。
 いまでは、無病息災を祈願してというより、ご馳走の食べすぎ、お酒の飲みすぎで、疲れた胃をいたわるための七草粥でしょう。
 最近は、ホテルの朝食バイキングにも、かならずお粥が並んでいます。
 水分が多くて、柔らかく、のどの通りがよいので食べやすいですね。その上、温かくて消化がよく、低カロリーなので、人気があって当然です。
 七草の種類は、一般的には「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ」です。これらをまな板の上に並べて、吉方に向き、七草ばやしを唱えながら、包丁で刻んで粥に加えます。
 このパフォーマンスをしながら、お粥を振る舞うお寺があるので、一度訪れてご馳走になりたいと思っています。
 唱えごと、または歌の文句は、「七草ナズナ、唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先に、ストトン、トントン、ストトン、トントン」。土地によって、歌詞の内容は若干違いがあるものの、意味としては次のようなものです。
 「唐土の鳥」は、中国大陸から渡ってくる渡り鳥のことです。病気を運んできて、作物や人に被害をもたらす害鳥のことで、その害鳥を追い払うことが目的であったという説です。
 唐土の鳥は別名、鬼車鳥とよばれています。中国のある土地に住み、毒を持っていて、夜飛びまわり、人間の捨てた爪を好んで食べた、といわれています。子供のころ、「夜に爪を切るのはよくない」と、親に叱られたことの理由が、やっとわかりました。
 爪を食べにやってきた鬼車鳥の血が、子ども(女子)の着物にかかると、疳の病になるといわれていたそうです。だから、七草は、害鳥を追い払い、豊作と健康を祈願するために食べたということでしょう。
 鳥インフルエンザは、現代の唐土の鳥かもしれませんね。抵抗力をつけるために、やはり野菜をたっぷり食べることが大切だ、という先人の教えを実行しましょう。
 

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illustration 所 ゆきよし

七草の栄養を証明しようセリは「日本書紀」にも出てくる昔人の知恵にびっくり

 セリはカロテン、ビタミンC、カリウム、カルシウム、食物繊維、クロロフィルを含む緑黄色野菜です。日本書紀にも、この名が見られるくらい古くから食用にされていた歴史があります。
 いまは、川辺や湿地に自生するものはわずかで、栽培されたものが売られています。香りが独特ですが、食欲を増進させる働きがあります。
 民間療法では発汗作用があり、眼精疲労や神経痛に効く、高血圧や更年期障害にもよいといわれています。
 これは、ビタミンやミネラルが豊富なためです。ゆでても歯ごたえがしっかりと残るのが特長なので、煮浸しや汁、煮物に適しています。煮汁を一緒にいただくと、ビタミンCが効率よく摂取できます。
 ナズナはアブラナ科の野菜です。ガン予防に効果がある野菜の仲間ですが、少量しか食べないものなので、役立つとはいえないでしょう。
 実の形が、三味線のバチに似ているので、ペンペン草といいます。子どものころ、くるくるまわして、音を楽しんでいました。
 ゴギョウは、オギョウ、ハハコグサともよばれています。咳や痰に効くといわれています。ハコベラは、ハコベ、ニワトリグサともよばれますね。ホトケノザは、コオニタビラコで、白い汁が出るシソ科の越年草です。
 スズナは、カブのことで、アブラナ科です。奈良時代より以前に中国から渡来した、なじみ深い、栄養価の高い野菜です。昔はおもに葉を食べていましたが、品種が変わって、白い根も食べられるようになりました。
 葉にはカロテン、ビタミンC、カルシウムが多く含まれます。アクがあるので、さっとゆがいてから料理に用いてください。アクが多いとミネラルなどの吸収が悪くなります。また、シュウ酸を摂取することになるので、加熱したほうがよいでしょう。
 カブの根は白い部分ですが、ビタミンCは、葉に次いで皮に多いのです。旬は皮が柔らかくおいしいので、皮ごと調理してください。
 皮をむいて、漬け物にしてもいいでしょう。生の食感は風味があり、栄養素も効果的に摂取できます。根は大根と同じように、でんぷん分解酵素、アミラーゼが含まれます。
 生で食べると、ご飯やパン、うどん、餅などに含まれる、でんぷんの消化を助けます。おろしたり、漬け物、サラダなどにすると、効果はさらに期待できますよ。ただし酢につけたり、レモンをかけると、アミラーゼの働きがなくなってしまいます。
 スズシロは、大根のことで、アブラナ科です。先のカブと同じように、でんぷん分解酵素のアミラーゼを含んでいますが、根の先にいくほどアミラーゼは多くなります。
 ですから、餅やうどん、そば、納豆、焼き鳥に添える大根おろしは、根の先をおろしたほうが効果的なのです。もちろん、生で食べないと、アミラーゼの効果はありません。
 ぴりっとした辛味は、イソチオシアネートという成分です。含硫化合物で、ガン予防の効果があることがわかりました。ビタミンCも含まれており、抗酸化作用でガン予防に役立つビタミンなのです。
 焼き魚の、焦げの部分に含まれる、発ガン物質の作用を抑制する作用も強くあります。たっぷり食べると、体にいいことばかりの野菜ですね。大根の葉は、カブと同様に栄養価が高いものですから、ご飯に混ぜたりして、利用してみましょう。

 
●もりの・まゆみ
長崎県佐世保市生まれ。女子栄養大学栄養学部卒業後、同大学栄養クリニックで20年間、生活習慣病などの食事指導にあたり、講師を勤めた。92年、栄養と健康の指導を目的とした(株)バイワネルを設立。企業の栄養指導コンサルタントほか、雑誌、イベント、ビデオの企画やTV、ラジオ、執筆活動、講演会などで食育活動を行なっている。主な著書に、『いただき!食べ物パワー』『高血圧症が気になる人の食事』『おいしく食べてコレステロールをみるみる下げる食事』『おいしく食べて糖尿病をらくらく治す食事』など多数ある。


●セリ、カブ、大根の
簡単クッキング!
【セリの磯辺煮おろしかけ】だしとしょう油、みりんを煮立て、ざく切りのセリと、海苔をちぎって入れて煮る。器に盛り、大根おろしをかけ、好みで七味唐辛子を振りかける。
【カブ、大根のたたきサラダ】大根は5cmの輪切りにして皮をむき、厚さ5mmの棒状に切る。ポリ袋に入れて、すりこぎなどでたたく。カブは皮をむき、うす切りにして、ポリ袋に入れてたたく。皮は千切りにする。ドレッシングであえて、カツオ節をかける。大きさはお好みで。包丁で切るよりも、味がしみて食べやすいですよ。

●注目したい栄養成分!

カロテン、ビタミンC、カルシウム、食物繊維、でんぷん分解酵素(アミラーゼ)、辛味成分イソチオシアネート、クロロフィル、ポリフェノール。


●どんな症状に役立つか!

胃もたれ、ガン予防、眼精疲労、高血圧、骨粗しょう症、便秘に有効。

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