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団塊世代の定年(1)2007年から地殻変動が始まる

「団塊の世代」という言葉は、堺屋太一氏の同名の小説 から生まれた。戦後1947年〜49年のベビーブーム世代を指しており、日本の人口構成の中で、ほかの世代を2割から5割も上回っている。
その彼らが2007年から一斉に定年退職を迎える。年金は大丈夫か、企業の人材不足はどうなる?
戦後の日本の、メイド・イン・ジャパンを創出し、支えてきた、この世代の現役引退は、社会に どのような影響をもたらすのだろうか。
その問題点を3回にわたって、シリーズで お届けします。




団塊の世代とはどんな人たち?モーレツ社員、核家族。戦後日本の先導役

 小説『団塊の世代』を1975年に執筆、この世代に着目した堺屋太一氏によると、「団塊」とは元々は鉱物用語で、堆積岩の中で周囲と成分の異なる物質が固まった部分をいいます。「密度が高くて周囲と異なる性質を持つ」という意味を込め、「団塊の世代」と命名したそうです。
 「団塊の世代」とは、1947年から49年の3年間に生まれた人々を指します。平成16年現在の人口は、679万人。その前3年間に生まれた人より32%、後の3年より13%も数が多いのが特徴でした。
 戦争と物資不足を知らない最初の世代です。物質的には恵まれたので、概して気立ては優しい人が多い。けれども前の世代より3割も人口が多いと、学校の教室不足、高校や大学の定員も希望者に対して少なすぎるなど、何かと競争にさらされて育ちました。70年安保闘争の主役となって大学紛争を引き起こしたのも、人口圧力によるストレス発散だったとの見方すらあります。
 大学紛争があっけなく終わると、彼らは会社人間に徹して産業発展を支えました。戦後日本が工業化への道をまっしぐらに進む中、その価値観へ疑いを持たず、地域や家とのつながりよりも会社人間であらんとしました。郊外に家を買い、子どもを一流大学へ入れて、一流企業に就職させるという人生設計を掲げました。また見合い結婚より恋愛結婚を志向し、ニューファミリーと呼ばれる新感覚の家庭を築きました。
 団塊の世代は、現代の日本社会の形を身をもって作り上げた人々なのです。




年金、技術の空洞化と問題が山積する 大量定年で社会変革のチャンスにも
 2007年、人口の構成比率の高い団塊世代がごっそり定年を迎え始めると、どんな問題が生じるのでしょうか。最たる課題は、年金です。厚生年金の毎年の収支は、すでに2001年度から実質赤字に転落しています。そこへ団塊の大量定年。現役世代には不安がつのります。
 2004年に国は、年金制度を改正しました。これまでは現役世代への保険料負担を増やし、高齢者への給付を補っていたのを、現役世代の保険料負担に上限を設け、それを超えたら高齢者の給付を減らすよう、仕組みを変えたのです。
 もっとも過去、年金制度は5年ごとにいじられてきた経緯があります。高齢化は今後ずっと続くのです。この程度の改革で年金問題が解決するとは、とても思えません。
 もう一つの課題は、企業の人材不足です。とくに製造業にとって、団塊の世代が蓄えた技術やノウハウを一気に失うのは大きな痛手です。若手への技術継承をどうするのか、対策に追われています。
 しかし、見方を変えればどうでしょうか。
 団塊は、年功賃金と終身雇用をほぼ享受できた最後の世代です。不動産を入れれば総資産5000万円を持つという調査もあります。彼らが消費市場を活性化させれば、日本経済全体が浮揚し、現役世代も恩恵をこうむることができます。また大量定年はフリーターやニートの増加といった若年雇用問題を、緩和するでしょう。
 団塊の定年は、社会の新たな変化を促す可能性を秘めているともいえるのです。



手つかずの領域狙い、サービスも続々 新しく創出される「高齢者消費市場」
 消費者としての団塊世代とはどのような人々なのでしょうか。物心ついたころからテレビがあったため、情報感度が優れている。趣味への意欲が高い。ITの知識や運転技術など外の世界へ羽ばたくための「道具」を持つ人の率が高い。このような特徴があるといわれています。企業はその特徴を狙い、”元気な高齢者”向けに、さまざまな新商品やサービスを打ち出しています。
 アパレルメーカーには、団塊世代のスーツ需要が消えるのは大きな痛手です。かわりにセーターや綿シャツなどカジュアル服の新ブランドを投入しています。若者のカジュアルと差別化するため、欧州製のカシミアを生地に使ったり、若かりし日のアイビー・ファッションの神様、石津謙介氏が手がけたブランドを復活させたりします。
 団塊男性はそもそも働きバチです。豊富な時間を有効に使いたいと、趣味に打ち込む人も増えそうです。日経流通新聞の調査では、団塊男性の10人に1人は陶芸や絵画などクラフトを趣味とし、年25万2000円をそれにつぎ込む、また5人に1人は語学などの教室通いのために月1万円の月謝を払うつもりがある、と答えています。
 夫婦の時間を大切にする人が多いのも、この世代の特徴です。団塊夫婦は、妻が70年代のフェミニズム運動の洗礼を受けていて、夫婦関係も遊びも対等と考える「友だち夫婦」が多いのです。
 映画業界は04年から、50歳以上の夫婦を対象にした割引を始めました。1年間の予定でしたが、これが団塊夫婦に大好評で、期間の延長を決めました。旅行商品に年輩夫婦向けパッケージが増えているのも、団塊世代を狙ったものです。
 もっとも、自分たちで楽しむ術を手にしているのが団塊世代の強みです。現役時代に職場でパソコンを使っていたので、ネットで自分の作品を発表したり、趣味の仲間と集う人が増えるでしょう。モータリゼーションを支えてきた世代でもあり、運転免許の取得率は8割。行動範囲は広いのです。
 新たな消費市場の主役として、注目は高まるばかりです。



イラスト

  illustration:唐仁原 教久  



ニュースなことば●団塊の世代関連用語
【堺屋太一】元通産官僚で1970年の大阪万博の企画を手がけた。退官後は小説や経済書を執筆。小渕、森内閣では経済企画庁長官を務めた。
【70年安保】1960年締結の日米安保条約の改定反対を訴えた大学生が学園紛争を惹起。しかし、運動は69年を頂点に収束に転じ、安保条約は70年に混乱なく自動延長された。
【ニューファミリー】核家族、子どもは2人、マイカーを持つという都市型の家族形態。1970年代に登場した。
【マイホーム主義】社宅を出て、一戸建てを持つ風潮。団塊世代から始まった。
【団塊ジュニア】1970年〜75年生まれの団塊世代の子ども世代。親世代に次ぐ人口の多さで、第二次ベビーブーマーとも呼ばれる。
【ニート】学業にも仕事にも就かない15歳から34歳の人々。総務省調査では03年に64万人いる。とくに25歳以上のニートは2000年代に入り急増している。


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