フェアウェイの旅人 ROUND2 文・羽川 豊 1
ここぞという場面を見極める。勝つ選手は、10mのパットを1mオーバーに打てる。

彗星、石川遼を中心に、アマチュアの
活躍が目覚ましい男子ゴルフ界。

約1年半ぶりで、この連載を再スタートすることになった。僕にとっての新たなシーズンの始まりといった感じだろうか(笑)。今まで以上にゴルフの楽しさを、みなさんに伝えていきたいと考えている。

さて、今年のシーズンは早くも折り返しを迎えたが、前半戦を振り返ってみると、ビッグ5と言われたタイガー、ミケルソン、シン、グーセン、エルスの図式が壊れた感がある。ベテラン選手に負けまいと、若手が下からどんどん追い上げているのだ。日本の男子プロゴルフ界もこうなってくれればと思うのだが、なかなかね…。

その代わり、アマチュアの若手の活躍が目覚ましい。皆さんご存じの石川遼くんは、その代表格だが、彼の登場でアマチュアの試合がTV中継されるようになった。これは画期的なことだ。女子は宮里藍というスターが現れたことで、活気付いた。それに比べて男子は、青木さんやジャンボさんのようなカリスマ性を持ったプレイヤーが、なかなか現れない。そんなドンヨリした男子ゴルフ界に、彗星のごとく現れたのが石川くんだ(笑)。しかし、当の石川くんにしてみれば、大変なプレッシャーに違いない。でも、この子は、そういう星の下に生まれてくる運命だったんだよ(笑)。だからこそ、大変だけれど、このプレッシャーを跳ねのけていかなければいけない。

今、石川くんに必要なのは、試合だけでなく色々な経験。一流になるためには、ゴルフばかりではダメ。彼は、まだ高校一年生だし、すぐにプロにならなくても、いいと思う。「世界ジュニアゴルフ選手権」で経験したような、日本の代表選手として海外でプレーするということも、絶対にこれから役立っていく。僕自身もそうだった。大学2年でアジアアマの代表に選ばれ、たくさんのことを学んだ。色々な経験こそが、彼の成長の糧になる。その上で、きっちりと体作りをし、技術力に磨きをかけることが大切だ。よく土壇場で負ける選手を「精神面が弱いから」と批評する人がいる。でも、競り合って負けてしまうのは、単に技術がそこまでいっていないから。精神面は技術でカバーできる。それには、練習しかない。

そして、早い段階でもう一勝することが、何よりも重要だろう。そのためには、まずはマンシングウェアでの勝ちは忘れなさいと、伝えたい。以前にも書いたが、ゴルフほど前の勝ちが次につながらないスポーツはない。注目されるようになった一勝ではなく、注目されてからの一勝。そこから、自分なりの勝ちの法則が見えてくるからだ。

必死なプレーこそファンに届く。
若手プロのこれからの頑張りに期待。

写真

石川くんの出現で、活気付いてきた男子ゴルフ界。今の若い子たちは、世界を見据えているから、今後が本当に楽しみだね。だからこそ、彼ら以上に頑張って欲しいと思うのが、20〜30代の選手たち。団塊ジュニアと呼ばれる彼らのゴルフは、面白みというか、ハングリーさが薄いように感じる。

先日、ゴルフ中継を観ていると眠くなってしまうという意見を耳にした。これも、選手のプレーに必死さが欠けているからではないだろうか。シーズン前半の「USB日本ゴルフツアー選手権」で、片山くんと竹本くんが見せてくれたような熱い試合を、ファンは望んでいる。最後まで続いたバーディー合戦。片山くんに追いつこうと頑張る竹本くんの必死の表情が、観ている人たちの心をつかんだのだ。こういう気持ちを、団塊ジュニアの選手たちに、もっと見習って欲しいと思う。

そして、ハングリーさとともにゴルフで大切なのが、勝負時を見極める勘ではないだろうか。経験を積むと、ゴルフの怖さというものがわかってしまう。だからこそ、上手い人ほど刻んでしまう。でも、石川くんは違う。マンシングウェアの18番、3打目。バンカーからのショット。彼は、あれをオーバーに打った。タイガーだってあれはショートするだろう。それをオーバーに打てるとは、やはりそういう星の下に生まれているのだ。

10mのパットで、きっちり距離を合わせて刻んでくる選手は2、3位にはなれるけれど、勝てない。勝てる選手は、そこで1mオーバーに打ってくる。「ああ、強い」と周りが思っても、カーン!と入ってしまう。そこがスターになる人と、そうでない人の一番の差ではないだろうか。マンシングウェアであのショットが打てた石川くんは、本当に稀な子だ。「勝つ人は1mオーバーに打つ」とはいっても、何でも打っていいわけではない。そういう勝負をかけるタイミングを逃さないってことだからね(笑)。


HAGAWA's 1 POINT ADVICE
Question 最近ゴルフを始めた大学生の息子に、
上手くなるコツを聞かれるのですが。
大阪府/吉田 和則さん・49歳
Answer まずは、ルールやマナーをしっかりと覚えることが大切です。
最近、若手選手の影響で、学生や女性でゴルフを始める人が増えています。とてもうれしいことではあるのですが、TVの影響で、まずはスコアみたいな人が多いんですよ。でも、僕ら世代の人ならご存じだとは思いますが、昔の人はゴルフといえばルールから入ったもの。クラブを3、4本持って、まず走れ!と言われたはず(笑)。上達したいなら、きちんとルールやマナーを勉強したほうがいいと、アドバイスしてはどうでしょうか。若い人が最初にピンを抜くとか、バンカーは均していくとかね。ゴルフは自分が審判員ですから。また、ゴルフには「遊びゴルフ」と「競技ゴルフ」があります。始めたてなら、もちろん「遊びゴルフ」。何回打ってもバンカーから出ないなら、手で出してきてもいい。要は、好きこそものの上手なれ。「楽しかった、またやりたい」と思えることが、上達への近道だと思います。

写真 はがわ・ゆたか
1957年12月8日、栃木県出身。180cm、78kg。
日本オープン、日本シリーズなど国内6勝。1982年にはマスターズを15位でフィニッシュ。「世界のレフティ」と呼ばれる。現在国内外メジャートーナメントの解説を始めとして、NHKやテレビ朝日などで幅広く活躍中。セントラルスポーツ顧問。



(C) 2007 MITSUBISHI FUSO TRUCK&BUS CORPORATION. All rights reserved.