悠久の記憶 世界遺産 ブリュッセルのグラン・プラス(ベルギー)
文・長浜淳之介 写真・風間岬二
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文豪ユーゴーが世界でもっとも美しい広場と賛えた“プチパリ”とよばれるEUの本部
ブリュッセルは、起源より約1000年の歴史をもち、中心部の グラン・プラス(大広場)は、中世ゴシック建築の市庁舎、 ギルドハウス(商工業同業者組合会館)にとり囲まれ、地域の交易の 中心地として栄えたことをしのばせる。文豪ヴィクトル・ユーゴーは1852年、東側に建つギルドハウス鳩の家に逗留し「世界でもっとも 美しい広場」と賛嘆したという。かの有名な小便小僧は徒歩5分の距離、 王宮へは徒歩20分ほどで行ける。欧州最古のアーケードも至近距離だ。
1998年世界遺産登録。
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木造が多かったギルドハウスは、仏軍に破壊されたが、商工業者たちが私財を投じて、数年で世界一美しいと絶賛される石造りの建造物と広場を再建した。


ゲルマンとラテンが融合した中世以来の先進商工業地域
 ベルギーはヨーロッパ北西部、北海に面した王国で、北はオランダ、南はフランス、東はドイツとルクセンブルクに国境を接する。
 面積約3万528平方メートルは、日本の中国地方5県よりやや狭く、そこに東京都の約8割にあたる1045万人が暮らしている。首都はブリュッセルで、欧州連合(EU)の本部もあり、EUの首都的な側面も兼ね備えている。
 言語は、北部のフランドル地方はオランダ語、南部のワロン地方はフランス語だが、首都ブリュッセルは両言語が使われている。
 ゲルマン、ラテンというヨーロッパの2大民族が共存、融合する国として、国際的な地位は高い。
 歴史をたどれば、この地には古来ベルガエ族などのケルト人が居住していたが、紀元前57年にカエサルが征服。ローマの属州ベルギガとなって、キリスト教も伝えられた。
 4世紀ごろ、ローマ帝国衰退にともない、北部にはゲルマン系のフラマン人、南部にはラテン系のワロン人が移住。現在にまでいたる言語分布が形成された。
 西ローマ帝国滅亡後、中世にはフランク王国領となり、さらにフランス領となった。そうした中で、十字軍を契機とした遠隔地貿易の隆盛を背景に、12世紀にはフランドルの毛織物、ワロンの金属工芸が勃興。手工業者たちがギルド(同業者組合)を通じて、ブルージュ、ヘントなどの自治都市を発展させた。
 14世紀にはブルゴーニュ公国、16世紀にはオーストリアとスペインを支配したハプスブルグ家領となり、アントワープがヨーロッパ随一の商工業都市として発展した。
 さらに1795年フランス革命軍に占領され、ナポレオン1世失脚後の1815年、ウィーン会議によりオランダに併合された。
 しかし、オランダ国王ウィレム1世のオランダ側を偏重する政策に反発した市民が、1830年8月、フランスの七月革命に触発されてブリュッセルで蜂起する。同時にベルギー全土に独立戦争が広がり、オランダ軍を撃退。
 そしてドイツのザクセン・コーブルグ家よりレオポルドを国王に迎えて、独立を宣言した。
 翌31年のロンドン会議により、イギリス、フランスなどの列強に独立と永世中立を承認された。40年ごろにはイギリスに次いで、産業革命を達成。ヨーロッパ有数の工業国となり、今日まで国民所得の高い先進国として発展を続けている。

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後期フランス・ゴシック様式(フランボワイヤン)の装飾が美しい市庁舎。ファサード(建物の正面)と壁面彫刻は15世紀当時のままに復元された。96mの尖塔には黄金色に輝く大天使ミカエルが立ち、ブリュッセル市を見守っている。
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市庁舎の左側に建つギルドハウス。建物には外壁の装飾にちなんで、それぞれよび名がついている。顔だけ正面を向けた狐の彫刻の家は「狐」、隣りは「角笛」で船員同業組合、「雌狼」の射手同業組合、大工、家具職人同業組合などが続く。
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市庁舎の右隣りに建つ星の家、白鳥の家、黄金の木とよばれるギルドハウス。1階アーケードには、英雄セルクラース像とそれを議会に提案したシャルル・ビュルス市長の業績を賛えたアールヌーボーのレリーフがある。

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ブラバン公爵の像が置かれているのでブラバン公の館とよばれ、7棟のギルドハウスが入っていた。現在はホテル、銀行、レストランとして利用されている。
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王の家。現在は市立博物館。ブリュッセルの人気者「小便小僧」ジュリアン君に、今も世界中から贈られてくる衣裳が展示されていた。
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王の家の左隣り。鳩の家と天使の館、画家同業組合などが入っていたギルドハウス。フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーが、亡命時代をここで過ごした。
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芸術の丘から眺望する市庁舎塔。グラン・プラスから王立美術館に抜ける大階段を上がると芸術の丘。この高台から望むブリュッセルの街並みが美しい。
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市庁舎右隣り1階アーケードにあるセルクラース像。セルクラースは敵旗をもぎ取り、市民を蜂起させた英雄。像の右手を触ると幸せになるといわれる。
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ギルドの中でも優れた技術で貿易を発展させたのが織物業。ブリュッセル製のタペストリーは他国の王侯貴族から、富と権力の象徴と評価された。


中世ギルドの隆盛を物語る壮麗な建築に囲まれた大広場
 ベルギーの首都ブリュッセルは、1000年ごろにセンヌ川の中洲に砦が築かれたのを起源とし、“湿地にある砦”を意味している。
 フランドルの毛織物をドイツのケルンに運ぶ中継地として、徐々に発展。14世紀にはブルゴーニュ公国支配下で、オランダを含めたネーデルランドの行政の中心地となった。
 1831年のベルギー独立とともに首都となり、現在は首都圏人口約100万人を擁する、ベルギーでは第一の大都会だ。
 世界遺産に指定されたグラン・プラスは、町の中心にある縦110メートル×横68メートルの長方形の大広場で、ゴシック様式の壮麗な建物に囲まれている。カフェも多くあり、観光の拠点としても活用したい場所である。
 南西側に市庁舎、その向かい側には王の家があり、あとはさまざまなギルドハウスがびっしり立ち並び、15〜16世紀にヨーロッパの貿易の中心地の1つとして繁栄した、この街の面影を残している。大半が1695年のフランス軍の砲撃で倒壊した後、復元された。
 ゴシック様式の市庁舎は1402年に建築が始まり、49年に高さ96メートルの塔を増築。18世紀に再建された。公的なセレモニーに使用される広間、歴代の国王の肖像画を飾ったホールなどは必見。
 王の家は、13世紀にパン市場だった建物を16世紀にスペイン王カール5世によって、ネオゴシック様式に改築されたもの。
 19世紀に再建され、現在は市立博物館となっている。小便小僧の衣裳コレクションが楽しい。
 ギルドハウスのうち最大のブラバン公の館は、正面に歴代のブラバン公爵19人の胸像が並ぶ。
 館内は7つの建物に分かれ、カカオとチョコレートの博物館のある名声の館、なめし工が使用した財産の館、製粉業者が使用した風車の館などで構成されている。
 さらに、17世紀にビール製造業者が使用していた黄金の木の館の地下には、ビール醸造博物館がある。


地図 ブリュッセル・ミニガイド
ベルギーはオランダ、ルクセンブルクとともに、ベネルクス3国とよばれる西欧北西部の小国の1つ。1993年より連邦制をとっている。首都ブリュッセルへ日本からの直行便はないが、主要都市からの乗り継ぎが簡単で便利。パリ、ロンドンなどから1時間。グラン・プラス最寄りの中央駅まで国鉄で20分。鉄道もパリ北駅からタリス(国際特急)で90分。日帰りも可能だ。


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