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| 有田川は、世界遺産として知られる高野山を水源とする。 詳しくは、高野山を抱くように連なる高野三山の一つ楊柳山(1009m)に源を発し、湯川川、白馬川、早月谷川などを合流させながら西へ西へと流れ、有田市箕島で紀伊水道に注ぎ込む。 総延長94km、流域面積468 の和歌山県内主要河川の一つである。
上流の清水地区にある帆立貝状をした棚田“あらぎ島”は江戸時代初期に拓かれた水田。 中流に位置する金屋地区は明恵上人生誕の地だ。 明恵上人といえば、紅葉狩りで名高い京都・高雄三尾の一つ、栂尾・高山寺を建立し、華厳宗中興の祖として知られる高僧である。 また金屋地区から河口の有田市箕島は、有吉佐和子の小説『有田川』に描かれる「蜜柑づくりに生涯をかけた千代」の波乱万丈の舞台だ。 有田蜜柑の歴史は、この小説にあますことなく描かれている。 箕島に隣接する湯浅町は醤油発祥の地。 その街並みは国選定重要伝統的建造物群保存地区に選定されていた。 ここはゆっくり時間をかけて散策したい。 |
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| ヘアピンカーブのように蛇行する有田川の最上流。高野山を降りてきた押手、久野原から三田(あらぎ島)に多く見られる。自由に曲流する河川が地盤を浸食してできる地形で、有田川流域の特徴だという。 | |
| 二川ダム。昭和28年7月18日、有田川は未曾有の大洪水に見舞われた。昭和42年、防災対策として建設された、洪水調整、発電などの多目的ダムである。 | |
| 二川ダムに架かる蔵王橋。長さ150mのつり橋。1歩進むごとに足元が揺れ、数10m下の湖面を見下ろすと目がくらむ。3月下旬〜4月上旬、ダム湖畔に植えられた1000本のソメイヨシノが満開になる。 | |
| 旧清水町の有田川畔に建つ清水温泉健康館。木造八角屋根が特長の日帰り温泉施設。昭和63年の開業。川のせせらぎ、野鳥のさえずり、大自然が味わえる。 |
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| 棚田あらぎ島に 日本の歴史的文化遺産と “神聖なる土地”の姿を見た |
| 和歌山県有田川町清水。旧清水町である。有田川町は平成18年1月1日、隣接する金屋町と吉備町の3町が合併して誕生した。総面積約352 あらぎ島(蘭島)は有田川の上流、旧清水町にある。国道480号の高台に立って見下ろすと、数10m下を有田川がU字型に蛇行している。その河岸段丘に、帆立貝の形をした棚田が扇状に広がっていた。 雲に乗った仙人が、地上を覗いているような不思議な気分になってくる。2.34haの陸の島に、大小54枚の棚田が分かれている。 河岸段丘の棚田は、全国でもあらぎ島だけである。たわわに実った稲は収穫を待つばかりだった。秋の空が高かった。 写真集『棚田百選』(講談社)を出した写真家森田敏隆が、「5月下旬の代掻きから6月上旬の田植え、9月中旬の実りから稲刈りまで撮影の題材は豊富。…夏の終わりから秋にかけて川霧がたなびく朝の景色も素晴らしい」という通り、この日も大勢のカメラマンがやってきて、道端に隊列をつくっていた。 英国の写真家ジョニー・ハイマスは、写真集『たんぼ』(NTT出版)の中で、棚田を「神聖な土地」とよび、「単なる農地を超えた日本人の社会的歴史的な遺産」だと書いている。 あらぎ島は、江戸時代初期の1665年、大庄屋の笠松左太夫が私財を投じ、6年かけて年貢米の増産のために、開墾した島棚田だった。 2750m上流にある湯川川に取水口を設け、幅90cmの疎水路「蘭島溝」を完成させた。断崖絶壁を切り開いてつくられた疎水路は、2.34haの段々畑を田んぼに変え、366年たったいまも現役である。 あらぎ島は平成17年、「第4回美しい日本のむら景観コンテスト」では、農林水産大臣賞受賞、その他に、日本の棚田百選、和歌山の朝日・夕日100選に選ばれている。 《冬は細くて目に立たない有田川の夏から秋にかけての氾濫は年によって凄まじく…》と、有吉佐和子が小説『有田川』で書いているように、有田川の名の由来は「荒れた川」からきているという。 |
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| 施無畏寺(せむいじ)。湯浅町の地頭湯浅景基(かげもと)が鎌倉時代の寛喜3(1231)年に創建、従兄弟の明恵上人に寄贈。寺の付近一帯を殺生禁断の地とすることを願って上人が命名した。 | |
| 明恵上人が修行したという、紀伊水道に白崎、鷹島、苅藻島、黒島の島影が逆光に浮かぶ。 | |
| 旧金屋町にある歓喜寺。平安時代の寛和2(986)年の創建、建長元(1249)年、明恵上人亡き後、高弟喜海によって再興され、「歓喜寺」と称した。 | |
| 小説『有田川』でも祭りの様子が描かれる有田市の須佐神社。神社が千田にあることから千田祭りともいわれ、喧嘩祭りとして知られる。高田浜で行なわれる鯛投げ神事がとくに有名だ。 | |
| 有田川に両岸から迫る山並みは、山頂まで石垣で築き上げられた蜜柑の段々畑が続く。有田地区だけで面積3400ha、年間8万2000tが生産される。 | |
| 漆黒(しっこく)の闇を待つ有田川の鵜飼い船。全国で唯一の徒歩(かち)漁法といって、鵜匠が川に入って鵜を操る珍しい鵜飼いで600年の歴史がある。屋形船に乗って見学することができる。 |
| 明恵上人の生まれた町は 有田蜜柑のふるさと 醤油発祥の地だった |
| 明恵上人は、平安時代の承安3(1173)年に有田川中流の旧金屋町、歓喜寺の地で生まれた。栂尾高山寺といえば、高雄神護寺、槙尾西明寺とならんで三尾とよばれる京都の名古刹であり、三尾で唯一の世界遺産に指定されている。
明恵上人は、その栂尾高山寺を後鳥羽上皇から華厳宗興隆のため与えられ、鎌倉時代初期の建永元(1206)年に建立する。 境内の一隅に、栄西禅師が宋から持ち帰った茶の実を植えた。ここから茶が全国にひろまったのである。 毎年11月8日、宇治茶の製造業者たちが新茶を上人廟前に献上している。 あかあかや あかあかあかや あかあかや あかあかあかや あかあかや月 この前衛短歌のような歌をつくったのも上人である。月をこよなく愛し、月を歌った歌が多いため「月の歌人」ともいわれている。 ふるさとの やどにはひとり 月やすむ 思うもさびし 秋の夜のそら また19歳から40年間、自分の見た夢を正確に書き続け、世界で唯一の「夢日記」を残している。 上人の生きた鎌倉時代初期は、日本仏教の大転換期だった。浄土宗の法然、臨済宗の栄西、浄土真宗の親鸞、日蓮宗の日蓮らも同時代に生きた人たちである。 旧金屋町、有田市、湯浅に数多くの上人の遺跡があるのを、この旅で初めて知った。それだけでも感慨深い旅となった。
《五月に入ると川沿いの山々の鮮やかな緑を掩って蜜柑の花が一斉にまっ白に咲きさかる。蜜柑の花の匂いは、その慎ましやかな色と形に似合わない濃厚なものであった。…香りが…噎せ返るように溢れ、有田川の流れとともに川下に流れ、その匂いは遠く淡路島までも聞こえると云われるほどであった。》(『有田川』より)
有田川を両側からはさみ込むように、彼方まで山並みが続いている。どの山も頂上まで、堅牢な石垣を築きめぐらした蜜柑山が広がっていた。
有田蜜柑の歴史は古い。小説『有田川』の舞台にもなっているJR宮原駅近くの糸我に自生の橘が発見され、伊藤孫右衛門によって栽培が本格化したとある。室町時代の1429年から安土桃山時代の1601年ごろだった。 そして江戸時代、紀伊国屋文左衛門が嵐をついて、蜜柑を江戸に輸送、巨万の富を築いた話は伝説となって、いまも語り継がれている。「有田みかん」は昨年、地域ブランド名(地域団体商標)としての商標を、特許庁が認めた第1号となった。 有田市箕島から湯浅町は、世界遺産の「熊野古道」と高野山に通じる「高野古道」の分岐点が市域にあることにより、多くの史跡や歴史的文化財が残り、「紀州の敦煌」ともよばれている。 湯浅町は醤油発祥の地であり、往年の面影を残す黒塀の町並みが続く。鎌倉時代、「湯浅たまり」といわれた製法手法は、いまも続いているという。私は、醤油の香りが流れる、この町が好きだ。 醤油を船で運んだ山田川の大仙堀を渡ると栖原海岸に出る。この高台に明恵上人が命名したという施無畏寺がある。境内に登ると、上人が修業を積んだと伝えられる島々が、秋の海に浮かんでいた。 |
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| 明恵上人生誕の地として石造りの卒塔婆(そとうば)が立つ。歓喜寺から200m離れた蜜柑畑の中に立っていた。吉原遺跡として国重文に指定されている。近くに上人胎衣塚もある。 | |
| 有田川の太公望。有田川の清流は天然アユが遡上(そじょう)する川として知られ、「天然アユがのぼる100名川」に選ばれている。 | |
| 湯浅は醤油発祥の地。江戸時代の天保12(1841)年創業以来、いまも同じ製法で作り続ける |
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| 元仕込み蔵は、往時の醤油道具を陳列して、蔵人たちの知恵と汗の結晶を忍ぶ博物館として一般に開放されている。 | |
| 山田川からお堀を引いて醤油船を休憩させた大仙堀。醤油堀ともよばれていた。当時は紀州藩の保護を受けて、 |
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| 有田川河口にある北湊(きたみなと)みかん積み出し地跡に建つ山口誓子の歌碑。大正13年、紀勢本線が箕島に開通するまで約300年のあいだ、有田一円の蜜柑は北湊に集められ、この地から船で江戸方面などに出荷されていた。 | |
| 小説『有田川』に「川上のどの橋よりも大きく頑丈」と書かれた安諦(あで)橋。昭和38年に現行の橋に架け替えられた。全長219.76m。 |
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●有田市へは新大阪から特急くろしおでJR紀勢本線箕島駅下車●湯浅駅は箕島駅から各駅で3つめ、清水へは2つめの藤並駅下車●あらぎ島へは有田鉄道のバスで約1時間バス停「三田」下車●車なら阪和自動車道吉備IC経由でR480号●お問い合わせ先 |