選手が苦しんでやっとパーをとっていく。数々の名勝負を生んだ伝説の18番。
今シーズンも、間もなく終わりを迎える。このコラムが皆さんの手元に届く頃は、日本シリーズの真っただ中だろうか。
日本シリーズは、僕自身にとっても、思い出深い試合のひとつだ。1980年にプロテストに合格。翌年、初出場で日本オープンと日本シリーズで優勝を飾った。ただ、そんな経験とは裏腹に、日本シリーズと聞くと辛い試合という印象が僕の中にはある。皆さんもご存じの通り、この試合は年間を通して優勝した選手しか出場できない。その人数は30人弱。現在では、東京だけで戦うが、僕らの頃には前半2日間を大阪で、後半2日を東京でプレーした。だから、大阪でオーバーパーしている選手にとって、東京での残り2日間は、正直しんどい。勝てない位置からスタートするわけだから(笑)。ただ、調子のいい選手にとっては、こんなに楽しい試合はない。人数が少ない分、マークする相手が絞りやすい。だから、自分の位置をしっかりキープしながら、積極的に優勝を狙いにいける。
自身の試合以外で印象に残っているのは、91年のジョー(尾崎直道選手)が優勝した試合。前日にお父さんが亡くなったのだ。そんな状況にもかかわらず、神がかり的なパットが入ったことを、よく覚えているよ。勝ちたい勝ちたいっていう気持ちではなく、無欲でプレーできたのだろう。何の雑音もなく、何の重さもなくプレーする姿には、運命的なモノすら感じられた。
日本シリーズの見どころと言えば、18番のドラマだろうか。会場となる「東京よみうりカントリークラブ」の18番は、パー3でグリーンの傾斜がとてもきつい。距離は227ヤードだが、あの場所は、冬場はアゲインストになる。だから、プロでも2番アイアンか3番アイアンを使う人が多くなる。そうすると、ボギーを叩く可能性がすごく高くなるのだ。パーがなかなかとれない、パー3というわけ(笑)。選手が苦しんでやっとパーをとっていく。その懸命な姿、そのワンストロークが日本シリーズ最終ホールの醍醐味なのだ。そして、このホールのもうひとつの特徴が、ティーを打つ時にコース全体が見渡せるということ。まるでコンサートのステージに立ったような感覚だ。日本シリーズのしかも最終組で、このコースに立った気分を想像してみてもらいたい。本当にドキドキするから(笑)。例えばイーブンで、相手と競った状態から、あのティーを打つことになったら、6〜7割の選手はボギーを打ってしまう。しかも、グリーンにピタッと寄せても、あの傾斜だからね。しかし、だからこそ数々のドラマが、このホールから生まれたのだ。「選ばれし者」だけが戦える場所。その誇りを胸に、選手たちには今年も頑張ってもらいたい。
もしも野球のようにゴルフにもMVPがあったなら、今年は石川君にあげたい。アマチュアながら、プロの試合で優勝。ジュニアでも2勝目を挙げた。また、先日行なわれた日本オープンでは惜しくも予選落ちしてしまったが、5000人のギャラリーを動員した。確かに、技術面での課題は色々あるだろう。しかし、僕は皆が思うよりも早い時期に、石川君はプロに転向するのではないかと、最近予想している。石川君は試合をしながらでも色々なことを吸収し、勉強していける子。プロになる時期が早まっても、問題ないだろう。来年以降も、石川君の動向から目が離せない(笑)。
もうひとりMVPをあげるとしたら、谷口君だろう。ベストプロ賞とも言うべき勝ち方をした日本オープンが印象的だった。初日3オーバーからの巻き返しは本当に素晴らしい。ああいう状況になってしまったら、とにかく耐えるしかない。でも、普通は途中で気持ちが切れてしまうことのほうが多い。それを、諦めないで3日目にはイーブンにまで戻した。しかも、最終日には5アンダーで優勝。これは、本当にすごいことだよ。地道に、しかもずっと集中してプレーをしていかなきゃいけない。なおかつショットが乱れたら、あのスコアは出ないもの。
全日空で勝った苦労人の篠崎君にも、何か賞をあげたいな。38歳にして初優勝っていうのはすごい。コツコツ努力してきた人が花開く瞬間っていうのは、観ている人たちを感動させる。プレー中、特にプレーオフの時は緊張したと思うよ。でも、緊張しながらも、ウキウキしていたのではないかな。日本オープンで会った時に、「おめでとう」と声をかけたら、「未だに、日が経つにつれてうれしくなってきます」と、話していたもの(笑)。
僕自身のことでいえば、来年からシニアにチャレンジしようかと考えている(あくまでも予定ですが)。そこで、少しずつではあるけれど、トレーニングをスタートさせた。8年間のブランクがあるので、最初は何やっているの?って感じかもしれないけれど(笑)。とにかく、6月の試合に向けて、準備し始めていることを、皆さんにご報告しておこうと思って(笑)。
では、少し気が早いですが、皆さん今年もありがとうございました。来年もまた、「フェアウェイの旅人」をよろしく。