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3 MAR.2008
VOL.43 NO.449
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Sports Essay Seijyun’s Eye ─── 27 カペッロ、最後のミッション“優勝請負人”は、落日のイングランド代表を再生できるか
二宮清純 スポーツジャーナリスト
イングランド代表がユーロ2008予選で、よもやの敗退。24年ぶりの屈辱だった。“サッカーの母国”であるというプライドは、どこにもなかった。背に腹は変えられないと、イングランドサッカー協会(FA)は、“優勝請負人”の異名を持つイタリア人指揮官ファビオ・カペッロの代表監督就任を発表した。しかし、この人事に対して激しい批判も起こっている。その急先鋒がゼップ・ブラッターFIFA会長だ。雑音を消すには結果を残すしかない。だが、これまで18回を数えるW杯で優勝した外国人監督は1人もいない。果たしてカペッロ監督は、そのジンクスを破ってイングランド代表の救世主になれるか。
写真
イングランド代表監督に就任したファビオ・カペッロ
写真提供:ロイター=共同通信社

サッカー母国の落日

果たして、鬼軍曹は地に落ちたスリーライオンズを再生することができるのだろうか。

昨年末、イングランドサッカー協会(FA)はイタリア人指揮官ファビオ・カペッロの同国代表監督就任を発表した。

W杯日韓大会、ドイツ大会で同国をベスト8に導いたスウェーデン人監督スヴェン・ゴラン・エリクソン以来、史上2人目の外国人監督である。契約期間は4年半で年俸は650万ポンド(約15億5000万円)と過去最高。破格の契約にFAの期待の大きさがうかがえる。

イングランド代表はユーロ2008(欧州選手権)において24年ぶりの予選敗退を喫した。FWウェイン・ルーニー(マンチェスター・ユナイテッド)、MFスティーブン・ジェラード(リヴァプール)をはじめ、世界でも屈指のタレントを誇るイングランドの落日は大きな衝撃を与えた。

FAはユーロ2008の本大会出場を逃したイングランド人監督のスティーブ・マクラーレンを解任した。後任には元チェルシーのポルトガル人指揮官ジョゼ・モウリーニョらの名前が挙がったが、プレミアリーグの重鎮であるマンチェスターUのアレックス・ファーガソン監督とアーセナルのアーセン・ベンゲル監督の推薦もあり、“サッカーの母国”の再建はカペッロに託された。

“優勝請負人”の異名はダテではない。厳格で規律を重んじ、軍隊のように組織的なチームをつくる。セリエA優勝7度、スペインリーグ制覇2度、欧州チャンピオンズリーグ優勝1回。これまで率いたミラン、ローマ、ユベントス(以上イタリア)、レアル・マドリード(スペイン)をすべてリーグ優勝に導いた。勝負弱い現在のイングランド代表にとっては、うってつけの指揮官と言えるだろう。

しかし、不安はある。カペッロは代表監督を務めた経験が皆無なのだ。

言うまでもなく、クラブと代表の監督はまったくの別物だ。クラブの監督は日々の練習でチームを指導することができる。だが、代表の監督は招集したわずかな期間でチームの理念や戦術を叩き込み、選手間のコンビネーションを熟成させなければならない。カペッロが、いかにクラブレベルで結果を残してきたとはいえ、代表監督となると勝手が違うだろう。

本人もこの点は重々承知しているようだ。

「(代表監督は)週単位の仕事ではないから、今までのようにはいかないだろう。(クラブの監督の時と)やり方は大幅に変えることになる。短い期間でうまくチームをつくらなければならない」

スター選手の処遇も注目すべきポイントのひとつだ。

まず、06〜07シーズンのレアル・マドリードで確執が取り沙汰されたMFデビッド・ベッカム(ロサンゼルス・ギャラクシー)をどう扱うのか。レアル時代は、ベッカムを冷遇しながらも、最終的に助けられる形でリーグ優勝を成し遂げた。

代表通算100キャップの大台が目前のベッカムは「カペッロは今までのキャリアで成功と尊敬を勝ち取ってきた。僕も彼の計画に参加できることを願っている」とイタリア人指揮官を立てているが、カペッロはどう出るか。

マクラーレンやエリクソンが頭を悩ませてきたジェラードとMFフランク・ランパード(チェルシー)の両雄の起用法にも注目が集まる。

組織的で守備ありきのサッカーを信条とするカペッロが、攻撃的なセンターハーフの2人を同時に起用するとは考えにくい。だが、一方をベンチに置けば、一方が不満分子と化す恐れがある。あちらを立てれば、こちらが立たずだ。

カペッロはW杯のジンクスを破れるか

カペッロのイングランド代表監督就任に対しては国内外で賛否双方の声が巻き起こっている。

批判派の急先鋒がゼップ・ブラッターFIFA会長だ。

「サッカーの母国が、代表監督を選手と同じ国籍にするという神聖なルールを破ったことに驚きを感じている。イタリア、ドイツ、ブラジル、アルゼンチンといった他の強豪国は外国人に指揮されたことはない」

レディングのイングランド人監督スティーブ・コッペルも「(カペッロの代表監督就任は)悲しいことだね。私はイングランド人の監督として誇りを持っている。代表監督はイングランド人に指揮してもらいたかった」と冷たい反応を示している。

イングランド代表で初の外国人監督だったエリクソンが就任した際には、「屈辱というしかない」(元イングランド代表ボビー・チャールトン氏)「この人事は屈辱的だ」(元イングランド代表監督ボブー・ロブソン氏)と今以上にかまびすしかった。雑音を消すには結果を残すしかない。

カペッロは英紙のインタビューで2010年のW杯南アフリカ大会での優勝を力強く宣言している。

「南アW杯で優勝するつもりだ。そう考えていなければ、この仕事を引き受けることはなかった」

61歳という高齢もあり、カペッロは今回を最後に監督業を引退する意向を明らかにしている。

それだけに南アへの思いは並々ならぬものがある。コーチ陣は06〜07シーズンに指揮していたレアル・マドリード時代のイタリア人スタッフを用意するなど万全の体制を敷いた。

ところで18回を数えるW杯で、チームを頂点に導いた外国人監督は1人もいない。そのジンクスをカペッロは打ち破るのか。

「(イングランド代表監督で)私のキャリアの有終の美を飾りたい。今回の挑戦は難しいが、それは私が求めていたものだ」

優勝請負人の最後の仕事を見守りたい。

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●にのみや・せいじゅんプロフィール
1960年、愛媛県生まれ。
当代きっての論客スポーツジャーナリストとして新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどで幅広く活躍。
主な著書に『人を動かす勝者の言葉』『1ミリの大河』『スポーツ名勝負物語』『最強のプロ野球論』『勝者の思考法』『「超」一流の自己再生術』など多数。
http://www.ninomiyasports.com
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