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    日本初の「動くバー」が東京の街を彩る

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独創的なフードトラックが生み出す新鮮な体験が、飲食サービス業に新たな希望を与える。

渋谷・宇田川町の一画に駐車された、一台の三菱ふそう キャンター。マットに黒塗りされた外観以外は、一見、普通のトラックのようにも見える。しかし、荷台の扉を全開にすると、そこに現れたのはスタイリッシュなバーカウンター。周囲にテーブルとチェア、看板が用意されると、一瞬にして渋谷の一角がおしゃれなバーに様変わりした。

近年、フードトラックビジネスは大きな変貌を遂げた。食に対する健康志向や簡便化志向の高まりに呼応するように、都心のビジネス街に出店して食材の質や栄養価にこだわったメニューを提供する事業者も増えている。

一方、新型コロナウイルスの感染拡大で飲食サービス業は大きな打撃を受け、営業時間の短縮をはじめとする政府要請や消費者の自粛ムードによって、閉店を余儀なくされた店も少なくない。

株式会社クリエイターボックス代表取締役・篠崎友徳さんは会社経営の傍ら、長年、飲食店の開業を夢見て準備を続けてきた。しかし、コロナの感染拡大によって、突然、数え切れないほどの飲食店が廃業していく姿を目にした。

それでも彼は夢を諦めない決意を固め、変化に強いフードトラックビジネスに新たなヒントを得て、柔軟さと創造力を組み合わせ、のちにグッドデザイン賞を受賞する事業を作り上げた。こうして、2020年10月、移動型バー「BAR TRUCK MEDIA TLUX」はコロナ禍でオープンを迎えた。

街角に洗練された雰囲気を 「BAR TRUCK MEDIA TLUX」は、小型トラックの車両を改装したバーやコーヒースタンドを展開し、賑やかな渋谷から緑溢れる二子玉川、横浜みなとみらいなどといった、話題のエリアに出没している。ヴィンテージ調のウッドカウンターの洗練された雰囲気は道行く人々を惹きつけ、街中に新たな場を生み出す。

「お店がそのまま移動した感覚を味わっていただきたかったので、本格バーの佇まいと、シンプルモダンなデザインに力を入れました」。「TLUX」という名前は、Truck(トラック)とLuxury(ラグジュアリー)を組み合わせた造語で、彼のビジョンを表現している。注文の仕上がりをただ待つのではなく、カウンターに自由に腰掛け、心が休まる居心地のいい空間を生み出すことで、彼はフードトラックの体験をさらに一歩、進化させたのだ。

「あらゆる場所でお客さまをWOW!と驚かせたいし、驚きや感動を届けたいんです」

開放感と解放感 「TLUX」が提供するのは、さまざまな景色の中でオシャレなカクテルを味わうSNS映えの体験だけではない。換気のよさを最大限確保することを念頭に設計され、安心して飲食を楽しめる環境作りに配慮している。車両の片側の扉を全開にする仕様は、車内のスタイリッシュなインテリアを外から見渡せるだけでなく、常に換気を行うためのデザイン的要素にもなっているのだ。

キャンターが選ばれた理由 「TLUX」に三菱ふそうのキャンターが採用された背景には、キャンターの燃費のよさと操作性があった。予測不可能な時代に飲食業に参入するには、ランニングコストを抑えることが極めて重要。その上で、狭い場所でも運転しやすいことは彼のビジネスプランにおいて大切な要素だった。

街角から公園、海やキャンプ場まで、思いがけないロケーションを自由に行き来できるのが「TLUX」の魅力だ。「あらゆる場所でお客さまをWOW!と驚かせたいし、驚きや感動を届けたいんです」と彼は言う。

スタイルのあるデザイン 実用的なデザインとスタイリッシュな美しさを融合した「TLUX」は、理工系の学位を取得後、クリエイティブ制作やマーケティング分野で10年以上の経歴を持つ、篠崎さんの多様なバックグランドから生み出された。2017年に東京を拠点にしたクリエイティブカンパニーである株式会社クリエイターボックス(CREATOR BOX INC.)を創業しているが、「TLUX」は同社初の飲食メディア事業としてTV・新聞・WEBなど様々なメディアでニュースとして取り上げられ、ポストコロナの暮らしを再定義した創意工夫が評価されて、2021年度 グッドデザイン賞を受賞している。

「これからも、どんどんこの車を走らせて、贅沢なひとときをお届けしたいです」。社会が直面する課題に取り組み、飲食店のあり方を時代の変化に合わせて進化させることで、「TLUX」は人々に新たな感動を届けている。あなたがいる街に「TLUX」が現れたら、美味しいカクテルを楽しみながら思い出して欲しい。一台のトラックに込められた夢と限りない創造力を。