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大型路線バス用電気ハイブリッド(HEV)駆動システムの詳細

燃費1.7倍、排出ガスも1/2以下に低減

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2000年10月16日


  1. 開発の背景

近年、都市内を走行する路線バスには、大気汚染の深刻化に伴う排出ガス低減への要求および経済性、 地球温暖化防止対策としての低燃費化(CO2排出量の低減)が切実に求められている。 一方、高齢化社会に向かいバリアフリー対応としてノーステップバスが将来の主流になろうとしているが、 従来の駆動システムでは機器の搭載により床面の平面部に制約があり、居住性、車椅子の移動等、満足できる状態にはない。

このたび開発した大型路線バス用電気ハイブリッド(HEV)駆動システムは、 低公害車として全国に普及させるためインフラ整備が不要で実績ある現行ディーゼルエンジンを動力源としながらも、排出ガス、燃費、騒音を大幅低減し、 環境との調和を図ると共に、合理的な機器配置によりノーステップバス室内平面床の拡大を可能とする、 実用性の高い理想的な路線バス用駆動システムである。



電気ハイブリッド(HEV)駆動システムを搭載した大型路線バス
「エアロノーステップバスHEV」イラスト

  1. 駆動システム概要

方式 シリーズ式ハイブリッドシステム
発電用エンジン 6M6(8.2L)ディーゼルエンジン
発電機 100kW
駆動モーター 最大150kW×2
制御 制動エネルギー回生付VVVFインバータ制御
電池 高性能648Vリチウムイオン電池
  1. 性能特長

  1. エンジンを発電のためだけに使用するシリーズ式ハイブリッド方式を採用し、エンジンを効率および排出ガス性能の最良点で定回転運転すると共に、 停車時および発進時はエンジンを停止しEV(電池)走行する。 このためエンジン排出ガス、燃費性能等が高精度にマッチング可能となり、新短期排出ガス規制以降に予想されるNOx、 PMの規制レベルに対応できる能力を持っている。

    1. システム構成

      バス特有の超低床構造とするため、エンジンのレイアウトが自由にできる電気式シリーズハイブリッド構造を採用。 これにより電気駆動系をどこにでも設置できるようになり、レイアウトの自由度が大幅に増大した。
      走行用モーターとエンジンが分割できるので自由なレイアウトが可能
      エンジンは定回転発電するため、低燃費と排出ガスの低減を両立

    2. システム作動概要

      a : 発進時 / 低速走行時

      電池に蓄えられた電気エネルギーを利用して発進、低速走行
      発電用エンジンが停止していてもエアブレーキ、パワーステアリングが電池で作動するダブル補機システムを採用
      環境の特に厳しい地域や、深夜の走行時における騒音を大幅に低減
      b : 急加速時 / 登坂時 / 充電時

      エンジン発電により電気エネルギーを電池に充電。 急加速、登坂時などはエンジンによる発電電流と電池電流とで強力なモーターパワーを発揮
      モーターはツインモーターとし、高信頼性と大パワーを確保
      c : 制動時

      制動時にはモーターを発電機として制動エネルギーを回生。 ツインモーターとHEV用に新開発した充電受け入れ性(入力密度) がキャパシタ並にすぐれたリチウムイオン電池により強力に回生可能
      電気(回生)ブレーキと電子制御主ブレーキは最新のCAN通信により協調制御され、 車速ゼロ近くまで制動エネルギーを回生

    3. エンジン運転領域

      シリーズ式ハイブリッド方式ではエンジンは発電専用であるため、車速や走行負荷の影響を受けず定回転運転が可能。 このため燃費と排出ガスの良好域中央付近に発電ポイントを設定することにより、低燃費と排出ガス低減の両立が可能

  2. 排出ガスレベル

    シリーズ式ハイブリッド方式では車速や走行負荷の影響を受けずエンジンを定回転運転するため、 エンジン回転の全域を使用する従来車と比較し排出ガスを大幅に低減可能。



    さらに、本システムのエンジンは発電専用であるためガソリン、LPG、CNG等各種燃料の使用が可能であり、 将来的には燃料電池との組み合わせも視野に入れて開発を推進している。

  3. ハイブリッド車用として新開発の高入力/高出力/高エネルギー密度リチウムイオン電池を採用し、 制動時にはモーターを発電機として制動エネルギーを回収。 電子制御主ブレーキシステムとの協調制御により制動エネルギーの80%以上を回生することが可能となり、 従来のディーゼル流体式A/T車と比べて1.7倍の大幅な燃費向上を実現(当社比)。



  4. 新開発リチウムイオン電池

    新開発リチウムイオン電池はEV用*をベースにHEV用として特性を改良したものである。

    1. 電池構造

      大型路線バス用リチウムイオン
      電池構成
      セル電圧 / 重量 V/kg 3.6 / 1.7
      セル個数(1モジュール) 30
      モジュール数 6
      電池 総電圧 V 648

      * EV用リチウムイオン電池は三菱自動車が1999年に開発し、 この電池を搭載した電気自動車三菱FTO EVは、1999年12月に「24時間でどれだけの距離を走れるか」 という電気自動車の世界記録に挑戦し、見事記録(2142km走破)を達成、高性能を証明。

    2. 電池性能

      今回新開発したHEV用電池は、充電受け入れ性(入力密度)をキャパシタ並に向上。 エネルギー密度は10倍以上であり、EV(電池)走行を可能とすると共に、出力密度も大きいため充分な加速性能を確保。

      電池性能比較
        リチウムイオン電池 キャパシタ(参考)
      新開発HEV用 EV用 *
      入力密度 W/kg 425 165 450
      出力密度 W/kg 1000 1050 450
      エネルギー密度 Wh/kg 60 92 6.1

  5. 超扁平シングルタイヤ(リヤ)

    コンパクトで高出力のモーターと、後輪に超扁平シングルタイヤを採用することによりアクスル、 サスペンション構造の変更なしに後輪部の通路幅拡大(当社比1.4倍)を実現。

    サイズ 435/45R22.5
    ころがり抵抗 15%低減(従来ダブルタイヤ比)
    重量 18%低減(従来ダブルタイヤ比)
  1. 電気ハイブリッド(HEV)ノーステップ大型路線バスへの適用について

このエンジンと発電機をセットで車両最後部に横置きに搭載し、電池を屋根部に設置することにより、ノーステップ車体構造が実現可能。 従来車に対し後輪部の床面積の拡大、さらに最後部座席位置後退による床面積の拡大と扉の設置位置の自由度増大が期待できる。

走行性能は都市内走行に充分な性能を確保することができ、電気モーター駆動ならではの変速ショックの無いスムーズな加速も実現可能。

運転操作は、電気モーターによるフルオートマチック駆動の採用によりクラッチ操作も不要となる。

以上


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