「2025年までに達成できるんじゃないか？」

ある会議室で交わされたこの一言が、三菱ふそうのサステナビリティ戦略を大きく動かした。2039年を目標としていたCO₂eニュートラルの達成時期を、14年も前倒しするという大胆な挑戦。果たしてそれは可能なのか？そして、なぜふそうはその道を選んだのか？

商用車業界の責任と覚悟

商用車は世界のCO₂排出量の5%以上を占めており、ふそうの親会社であるダイムラー・トラックはそのうち約15%を担っている。だからこそ、ふそうは「Making Sustainability Count（サステナビリティを重視する）」という戦略のもと、単なる目標達成にとどまらず、トラックの製造・運用・動力のあり方そのものを根本から変革するという覚悟を持って挑んでいる。

「実現不可能なゴール」と思われた2025年

多くの生産プロセスは依然として化石燃料に依存しており、その見直しには大規模な投資と技術革新が必要である。水素燃料やカーボンキャプチャーなどの技術はまだ発展途上であり、日本国内ではインフラも整っていない。

しかし、ふそうは「今できること」に集中した。

実行された主な取り組み

・年間約2.4GWhを発電するソーラーパネルの設置
・エネルギーシステムの最適化と再生エネルギー由来電力の調達により、2015年以降約50,000トンのCO₂eを削減
・工場内物流の電動化による燃料使用の削減

これらの取り組みは、現場のエンジニアや施設管理者、プロジェクトリーダーたちが、サステナビリティに真摯に向き合い、柔軟に対応しながら努力を重ねた結果、実現したものだ。

数字で見る成果

2015年以降、ふそうはCO₂e排出量を70%削減、エネルギー消費量を40%削減した。14,000㎡のソーラーパネルを設置し、残る排出量はカーボンクレジットで相殺。2025年末までに、ふそうのバランスシートはカーボンニュートラルとなる予定だ。

カーボンニュートラルとは？

排出された炭素と同じ量を大気から除去することでバランスを取ること。ふそうは、削減しきれない排出量を認証済みのカーボンクレジットで相殺している。たとえば、森林再生プロジェクトへの投資により、自然な形で炭素を吸収し、持続可能な開発にも貢献している。

ニュートラルの先へ

ふそうの次なる目標は「ゼロエミッション」。水素燃料やカーボンキャプチャー技術の導入、内燃機関からの完全移行など、さらなるイノベーションが求められている。

文化を変えた、たった一つの問い

「もっと早くできないか？」

この問いが、ふそうのタイムラインだけでなく、企業文化そのものを変えた。現状に満足せず、可能性を信じることで、未来は加速する。2025年のカーボンニュートラル達成は、次のゴールに向けたふそうの新たなスタート地点にすぎない。